データと職人技で競争力を磨け

数年前にガートナーが「これからはビッグデータです」と言い出した。ビッグデータの力を確信していた私たちは、海外から革新的な事例をたくさん仕入れ、ここぞとばかりに多くの企業に営業をして回った。でも当時の日本では、まだまだ顧客サイドがそこまで現実味を持っておらず、「そんなことができたらいいね」と遠い将来の夢物語を聞いているかのような反応が多かった。ビッグデータで自分たちのビジネスをどんな風に変えていけるのか、なかなか実感を持っていただけなかった。

それでも、私は当時から現在まで、ビッグデータが「すごいこと」をもたらすと信じて疑ったことがない。なぜなら、以前私が勤めていたグローバル半導体企業での実体験があるからだ。


共通言語は「統計」

その会社はグローバルに多くの工場を持ち、同時に最先端の技術開発を行なっている。様々な技術開発や技術管理が並行して走っている状況だ。そして、各プロジェクトに携わる専門家同士の共通言語は「統計」だった。

ビジネスも技術開発も、あくまで科学として追求する。だからその実効性は、統計的に解析・実証する。これは開発現場から見ると、まどろっこしい部分もある。しかし会社全体を最適化するという視点から眺めれば、必要なことでもある。

しかし、すべてを「統計」で管理する理由はそれだけでないことを、その後目の当たりにした。


大御所の予測さえ上回ったデータの力

私が最先端技術の共同開発プロジェクトの全体マネージメントを担当していたときのこと。共同開発パートナーにはその業界の大御所がたくさんおり、彼らは経験的に立てた予測を元に予算を提案した。一方、私たちは科学と統計を根拠として、まったく異なる予算を策定していた。長い議論の末、初年度は私たちの作成した予算でいくことになった。いわば、開発現場のビッグデータアプローチである。

そして開発の成果が出た時、誰もが驚き歓喜した。期間、費用、成果、どれをとっても当初想定を大幅に上回ったのだ。以降、統計分析アプリーチに異議を唱えるものはいなかった。当然ながら開発の成果は再現可能なもので、すぐに製造現場に適用するための基礎データがきれいにそろっていた。


データx 職人技が競争力回復のカギ

日本人は現場感覚に優れ、職人技が突出していると言われる。しかし、データがあふれる時代になり、職人芸に依存せずにすむケースが増えている。職人芸だけでは成果も出にくいことも多い。そんな今だからこそ、データを集め、分析をし、その上に職人技でのアプローチをすれば、きっと日本の会社の競争力が大きく回復できるのではないかと思う。


Antuit株式会社 代表取締役 釼持 祥夫