データ分析の成功と失敗を分けるポイントとは

以前いた会社で、SoRとSoEという言葉があった。それぞれSystem of RecordとSystem of Engagementという言葉の略で、SoRは会計・人事などの基幹系システムを、SoEは顧客と関わる時に使うシステムを指す。

大切なのはそれぞれに対するライフサイクルの違いだ。SoRは文字どおり会社の基幹を支えるしくみなので、しっかりと要件定義をして、長期にわたってあまり変わらないシステムとなる。一方顧客と触れる時に使うSoEは、どんどん作っては変えることが重要だ。システムやしくみを頻繁に入れ替えることも厭わず、スクラップアンドビルドをしながら顧客体験を改善していく。


顧客システムはやってみないと分からない

実は、日本人はこのSoEがとても苦手なんじゃないかと思う。特に大会社が。SoRは長期にわたるもので、いわば計画経済の象徴。入れた結果はある程度予想できたり、コントロールできるものになる。稟議書を回して社内承認を取る時に「こんな結果が期待できます」と言うことができ、合意形成もしやすい。経理、財務、そしてサプライチェーンなどの導入は、日本の会社は得意だ。

でもSoEが対象とする顧客システム・プロセスの場合、相手は顧客であり、競合の動きによって何が起きるか分からない。「どんな結果が出るんだ」と聞かれても、本音は「やってみなければ分かりません」となる。減点主義の日本の大会社では、やってみたけど結果が出ませんでしたとなると、提案者は場合によっては社内出世レースの致命傷になりかねないので、大きな投資を提案しにくくなる。

売上を伸ばす、CRMに取り組む、なんて話はあるけれど、これらは取り組みの本質としてSoEのアプローチになるということが、意外に理解されていない。結果は、顧客とがっぷり四つに組んで、好みを聞いてみないと(売れるか売れないかをみてみないと)分からないのだ。


分析も、やってみないと分からない

分析プロジェクトも同じ。「分析で結果が出ると約束できるのか」とときどき迫られるが、本音を言えば約束はできない(それでも、結果が出ると信じているから、この仕事をしているのだが)。もしかしたら、その業界・業務にどっぷり浸かっていて、素晴らしい勘と経験を持った人からすると「当たり前」の結果しか出ないことも、正直ある。でも、自分で把握できる範囲をはるかに超えるデータ量が溢れ、今まで知ることができなかった情報を得ることができ、それを処理する力(システムとデータサイエンティスト)があるこの時代、もう勘と経験を培っている時間なんかなくて、客観的に、冷たく、淡々とデータ分析をした方がいろんな発見・知見にたどり着ける。

では、どうやったらたどり着けるのか。それは、分析も試行錯誤であり、本質はSoEであると理解した上で取り組むこと。これに尽きる。すぐに成功なんてしない。出てくる分析の結果も、はじめは明後日の方向を向いているかもしれない。それでも、そんな取り組みにしっかり入り、自分の分析の理解・知見を深めることによって、分析で正しい(見るべき)結果にたどり着く肌感覚を養うことができる。データサイエンティストとキャッチボールができるようになる。その勘所が見えてくれば、突然分析というSoEが自分を中心にぐるぐる回り始める。

まず、はじめてみること、そしてそこで試行錯誤を繰り返すこと。そういうことなんじゃないかと思う。


Antuit株式会社 代表取締役 釼持 祥夫